アルツハイマーと記憶障害のケアについて

認知機能に障害を持つ人のケアを行うときには、自分自身が認知症の基礎知識をどれくらい持っているのかを客観的に知っておくことが大切です。なぜなら、基本的な知識やケア方法が身についているかどうかで、利用者の生活の質が左右されることもあるからです。認知症は大きく分けて4種類に分類することができ、それぞれで特徴やケア方法が異なるので、適切なケアを行うためには、基礎知識はしっかりと身に付けておきましょう。

たとえば、アルツハイマー型認知症は、新しく体験したことを忘れやすいという特徴があります。しかしその一方で、昔の思い出は残りやすく、脳の扁桃体の働きによって、感情を伴う出来事は記憶されやすいと言われています。そのため、何時何があったのかは忘れていても、その時の感情は残ることがあるため、楽しい体験を重ねていけば快い記憶を利用者に残すことができ、生活の質は向上できます。

それから、記憶障害の中には、認知症になる前に蓄えた記憶を徐々に思い出せなくする逆向健忘があります。このような場合は、現実に起こったことを忘れてしまうため、本人にとっては、忘れたことは体験していないことだという認識になってしまいます。ですから、記憶障害のある人への声掛けにおいては、「覚えていること」と「忘れていること」を普段の会話で何気なく探り、忘れてしまったことは基本的に話題に出さない配慮をすると、利用者の戸惑いを減らすことができるでしょう。

ただし、このような記憶障害の方への接し方では、忘れてしまったことでも、断片的な記憶は残っていることも考えておくことが必要です。妻子のいる人が自分は20歳で未婚という年齢逆行を示すことがありますが、さりげなく奥さんや子どもの名前を出してみると記憶を引き出せることもあるので、そんなときは会話を通して、どこまでの記憶が残っているのかを調べてみるといいかもしれません。